ウホッ!!いい男たち


山川純一
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ゲイ雑誌『薔薇族』で活動した漫画家・山川純一先生の作品集
※本書は成人指定図書です。

舞台設定が多岐に渡り、処々にギャグも施され、内容的にはなんともバラエティに富んだ一冊です。そして、そのストーリーテラーぶりがまたすばらしい。

高校一年生のナルシストを描いた「俺のオナニータイム」では、徹底した自己愛とその自分の未来にわくわくしている主人公の姿が描かれ、高校の柔道部を舞台にした連作「やりすぎたイタズラ」では、1作目で生徒達のイジメの対象になった風紀教師が2作目では美青年に変身して登場したりと、作品にポジティブな空気が漂い読者を明るい気持ちにしてくれます。

反面、第二次大戦の捕虜収容所を舞台にした「地獄の使者たち」では、生き残った小早川大尉と嶋本が、最後の極限状態の中で、愛と忠誠心をを貫きながら自決するという、光人社あたりの戦記本に普通の載っているような内容になっています。また、サラリーマンの兄と警察官の弟とのある物語を描いた「男狩り」では、怒涛の展開が繰り広げられ、ラストの弟の涙にこちらも泣かされるという、強力な余韻を感じさせる内容になっています。

そして、本書のタイトルの由来「ウホッ!いい男…」というセリフが強力な「くそみそテクニック」では、男と男の奔放な性が公衆トイレを舞台に描かれていて、なんといいますか、「王道」的なものを感じて止みません。(詳しくは本書で)


本書は3冊の元本と単行本未掲載作品で構成されていて、一番古い元本『君にニャンニャン』(けいせい出版)は20年前に刊行されました。

僕はこの手のマンガはまったく読んだことがありませんが、時代的な古さは全然感じられず、むしろ、内容の普遍性を強く感じました。それは、セクシャルな描写がほとんどなのに、作品の根幹にはさまざまな形での「純愛」があるからなのでしょう。


幅広く懐深い本書は、マンガ好きの方は一度は手に取る価値アリです!

【副題】〜ヤマジュン・パーフェクト
【発行】第二書房
【発売】ブッキング
【判型】A5判
【発売】2003年10月