ならの大仏さま


加古里子
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今日の日本がどうあるべきかを模索する上で必要不可欠な一冊

『だるまちゃん』シリーズ、『からすのパンやさん』等でおなじみの加古里子先生の傑作絵本。

タイトル通り、奈良の東大寺の大仏様の解説本で、内容はその建築方法、当時の世界状況、とりまく人々の物語、そして現在にいたるまでの修理の歴史等々、「オールアバウト奈良の大仏」といった感じです。


大人がこの本を読む時、おそらく多くの人々が「子ども向けの本だから、内容はどうかな」と思われるかと思いますが、冗談じゃありません、おそろしくストイックで密度の高い内容になっています。

出だしは当時の奈良の街の説明ですが、次の項目はいきなり「7・8世紀の世界」とワールドワイドな視点になり、ヨーロッパ、西アジア、中国等の宗教事情が絵で説明されています。

そして平城京の説明と聖武天皇等の当時の奈良文化の説明がことこまかく展開されています。例えば、皇室の人間相関図や、当時の政治のシステム、役職ごとの平均年収、伝染病の大流行、広嗣の反乱、さまざまな陰謀などなどです。

ここら辺で「いったいいつ大仏建立話になるんだ?」と思われると思いますが、ガマンしてください、この辺の基礎知識がしっかりしていないと、大仏建立エピソードの本当に美味しいところを味わうことができないのです!

そして、なんと28ページにして、ようやく大仏が登場します。
しかしながら、まだミニチュアダミーだったりするのです。

30ページからは13ページにわたって建立場面がみっちり描かれます。
もう、男子ならば手に汗握りまくってしまう、どれだけ危険なプロジェクトだったのかがひしひし伝わってきます。開眼法要のシーンのなんと神々しいことか・・・。(詳しくは本書で)


と、この後も詳しい説明が続いていき、この絵本はなんと、児童書絵本では異例の79ページという大作となっております。

なぜ大仏を立てたのか? それを知ることは、今日の日本がどうあるべきかを模索する上で、必要不可欠な要素ではないかと思わせてくれる一冊です。

書店の児童書売場にはマストです!

【判型】A4、上製
【頁数】80P
【発売】2006年3月